【天沢聖司の日記④】初めて月島雫と会話した日 《耳をすませば》
今日は進路のことで先生に相談しに学校に行ったら月島雫が友達といるのを見かけた。
校庭前のベンチで二人で何か楽しそうに歌ったり笑ったりしていた。
野球部の人にフェンス越しに話しかけられていた。
どうやら月島雫たちが座っていたベンチのそばにカバンを置き忘れたので投げてほしいと言っているようだった。
すると月島雫の友達が急に駆け出してしまった。
月島雫は野球部員にカバンを投げてやったあと、友達の後を追う。
しかし月島雫はベンチに何かを忘れていったようだった。
月島雫が戻ってこないことを確認してからそのベンチに向かうと、本が置いてあった。
そして本には紙が挟まっていて、そこには楽譜と歌詞が書かれていた。
カントリーロードの和訳のようだ。
合唱部の何かで使うのだろうか。
月島雫がで和訳しているらしい。
だが、カントリーロードを普通に和訳したものの他に、コンクリートロードと書かれたものもあった。
あまりのくだらなさに思わず笑ってしまった。
楽譜を眺めたあと、本を読んでいると月島雫が戻ってきた。
急に現れたのでドキドキしてしまったが、伝わらなかっただろうか。
女の子との接し方が分からず、つい冷たくしてしまったような気がするが大丈夫だろうか。
突然だったのであまり覚えていない、、、
とはいえ、ようやく初めて月島雫と話すことができた。
面白い子だなと思ったことは覚えている。
もっと仲良くなりたいと心から思った。
以前市立図書館で遭遇して以来、月島雫がまだ読んでいない本をひたすら探し、月島よりも先に貸出カードに名前を書くことを繰り返した。
借りた本の題名は全てメモしてあるし、返却してしばらくしてからその本の貸出カードを確認して、月島雫が俺のあとに借りている本が何冊かあったことも把握している。
月島雫は確実に俺の名前を何度か見ているはずだ。
もしかしたら天沢聖司の存在に気付きはじめているかもしれない。
もっと仲良くなるきっかけはないだろうか。
いつか俺のバイオリンの演奏でカントリーロードを歌ってもらいたい。
きっと楽しいだろうな