役作りのための『パーソナルヒストリー』について ~台本に書かれていない部分を妄想する作業~
こんにちは、KTです。
今回は役者さんが役作りのためにやることを1つ紹介しようと思います。
役作りのための作業の一つ。それは『パーソナルヒストリー』
役者さんは台本の中で生きるキャラクターを演じることが仕事です。
ですが、自分以外の人間を演じるというのはとても大変で難しいことなんです。
完全にキャラクターを演じるためには、そのキャラクターのことを深く理解する必要があります。
たとえば、
「どういう性格なのか?」
「なぜそういう性格になったのか?」
「好きなものは?」
「なぜこのセリフを言うのか?」
「なぜこのワードチョイスなのか?」
などなど、キャラクターを演じる上で考え、理解すべきことは大量にあります。
それが役作りです。
ですが、キャラクターのことを理解しようにも、与えられている情報は脚本しかありません。
キャラクターの人生の一部を切り取っているにすぎない脚本では、そのキャラクターのことをすべて理解するのは無理があります。
ではどうするのか。
答えは、「妄想する」です。
脚本には描かれていない部分を妄想するんです。
たとえば、
シーンとシーンの間に時間経過があるのならその間に起きている出来事を妄想します。
妻がいる夫の役を演じるのなら、
・妻と出会った時のこと
・妻と初めてデートをしたときのこと
・妻にプロポーズしたときのこと
などを妄想します。
そうすることで妻への愛情の深さを理解でき、演技の端々に妻への愛情がにじみ出てきます。
できるだけ具体的にそのときの情景をイメージできるほどキャラクターに深みが出ます。
日時はもちろん、場所、天気、気温、におい、着ている服、その時の気持ちなど、詳細な情報をイメージします。
しかし、ただ頭の中で考えるだけで具体的な情景が浮かぶ人はなかなかいません。
ではどうやって妄想するのか。
僕がやっていたのは「日記を書く」です。
そのキャラクターになりきって日記を書くことで具体的な状況とその時の気持ちが整理できます。
この「日記を書く」という作業を僕は『パーソナルヒストリー(略してパーヒス)』と呼んでいました。
パーソナルヒストリーの具体例 。ジブリ作品「耳をすませば」の天沢聖司の場合。
パーヒスの具体例を出しましょう。
多くの人が一度は見たことがあると思います。
中学3年生の月島雫と天沢聖司が夢や恋愛を通じて成長していく物語です。
読書大好きな雫が図書カードにことごとく聖司の名前が書かれていたことから聖司の存在に気付き、密かに憧れを抱きます。
その後偶然知り合う少年と天沢聖司が同一人物であったことが判明し、恋に落ちていきます。
雫が借りていた本をたまたま聖司が先に借りていただけだと思いきや、実は聖司は雫に自分の存在を気付かせるためにわざわざ雫が借りそうな本を先んじて借りていたのです。
図書館ですれ違ったこともあるそうです。
劇中はそのシーンは描かれていませんが、もしも「耳をすませば」が実写化されて、もしも僕が聖司を演じることになったら、まず聖司が図書館で雫とすれ違った時のパーヒスを書きます。
聖司くんすごくドキドキしたでしょうねぇ(笑)
その時の気持ちがリアルに感じられていたら、劇中で描かれるファーストコンタクトの場面であんな嫌味なことを言ってしまった中学3年生の少年の気持ちも分かるようになるでしょう。
キャラクターの気持ちを分かったうえで発するセリフと、理解しないまま字面だけ追いかけて発するセリフは全く違うものになるはずです。
ちょっと分かりにくい例えになってしまいましたかね(笑)
要するに何が言いたかったかと言うと、
役者をやるなら脚本だけ読んで満足するんじゃなくて、脚本には描かれていないキャラクターの人生を妄想してねってことです。
そうすることで必ず演技に深みが出ます。
まとめ
・キャラクターの理解を深める作業の1つ。
それはキャラクターになりきって日記を書くこと。
・日記を書くことを「パーソナルヒストリー(略してパーヒス)」と呼ぶ。
・日記は脚本に描かれていない場面のことを書く。
・できるだけ具体的に書く。
以上、KTでした。